行政書士試験には、40字で解答する記述式の問題が3問出題されます。
1問20点で、法令科目244点満点中の60点を占めるので、
記述式答案の出来が合否を分けると言っても過言ではありません。
記述問題を解くのに必要なものは「正確な知識」と「テクニック」。
これからは、記述問題を合格点に持って行くためのテクニックをご説明いたします。
● 1 ●「最初に主語と文末を書き込む」
不合格になった人には、持っている知識を披露するのに終始してしまった人が数多く見かけられます。
記述問題は、試験委員が答えてほしいと思っていることを読み取り、的確なキーワードを盛り込みながら答えなければなりません。
自分の意見を述べるのではないということを肝に銘じなければなりません。
試験委員の望む解答から逸れてしまわないために、最初に文脈のレールを引いてしまいます。
方法は簡単です。平成19年度の問題47(記述式)を例にご説明しましょう。
(問)保健所長がした食品衛生法に基づく飲食店の営業許可について、近隣の飲食店業者が営業上の利益を害されるとして取消訴訟を提起した場合、裁判所はどのような理由でどのような判決をすることとなるか。40字程度で記述しなさい。
ここでは「どのような判決を・・」と聞かれているので、
文末は必ず「・・という判決をする」で締めくくります。
問題用紙の余白に下書きとして、「裁判所は、○○○の理由で、△△△という判決をする」と書きます。
あとは○○○と△△△の部分にキーワードを当てはめるだけです。
40文字なので、キーワードを入れればそれだけでほぼ完成です。
「そんなの出来て当たり前だよ」という受験者さんも試験当日になると、
緊張からか、文末が「・・でなければならない」とか「・・の場合がある」などの答案を書いてしまうのです。
そうなってしまうと「答案にすらなっていない」と言えます。
それを防ぐためにも最初に主語と文末を書いてしまうのです。
また、「何も書けていない」という最悪の精神状態を回避することも出来ます。
「・・の要件を答えよ」と聞かれていれば「・・という要件」で締めくくり、「・・理由は何か」と聞かれていれば「・・という理由」で締めくくる。
これは、表題にもある「試験委員との会話」を成立させるための鉄則です。
● 2 ●「必ず下書きをする」
いきなり答案用紙に書き込んでいく受験者さんがいらっしゃいますが、これは絶対にやめてください。
なぜなら40字は、皆さんの想像以上に短いのです。
あっと言う間に入りきらなくなり、焦りが増すばかりです。
記述問題3問に30分かけるとすると1問にかけられる時間は10分ですが、
この10分のうち8分は下書きの時間に当てて下さい。
まずは、前項でも申し上げたとおり、余白に、文の主語や文末を書く。
次に、試験委員が答えてほしいことは何かを考えながら、ベストなキーワードを3つ程度当てはめる。
最後に、文のつながりを調整して40字に近づける。
そして初めて答案用紙に書き始めます。
下書きの時は50字になっても60字になっても構いません。
前項の問題で言えば、「原告適格」と「却下判決」というキーワードが入っていて、文末が的確であれば16点はもらえるはずです。
ここでも言える事は、試験委員の問いかけを無視してはならないこと。繰り返しになりますが非常に重要なことです。
● 3 ●「満点を狙わない」
「え?どうして?」と意外に思われる方もいらっしゃると思いますが、
記述問題では1問20点満点中12〜16点で合格レベルに達します。
完璧な答案を作らなくても合格出来るのです。
この大前提を忘れると、試験本番の時に時間切れになったり、余計な焦りを招いてしまうことになります。
記述問題1問に必要とされるキーワードは3〜4つと言われていますが、
前項の問題でいえば、2つのキーワードが入ってしまえば既に合格答案です。
これ以上この問題に時間をかける必要はありません。
満点を狙わない、ということが逆に高得点に結びつくテクニックなのです。
以上、記述問題の「テクニック」を3つご紹介しました。
ただ、これらは記述問題を解くために必要な「正確な知識」と「テクニック」のうちの「テクニック」の部分のみです。
もう一方の「正確な知識」がなければ下書きにすらたどり着けません。
求められる知識は、総じて基本的な項目ばかりで、重箱のスミをつつくようなマニアックな知識ではありません。
講義で出てくる基本知識を身につけることこそが、行政書士試験合格の、そして法律家への最短距離なのです。